 ロバート・パーカー氏はシャトー・ル・パンについて ポムロルで最もエキゾチックで華やかなル・パンは、ポムロルよりサン・テミリオンを連想させるガレージワインの先駆けである。ル・パンには信奉者がおり、こうした特定のスタイルのワインを切望する人がいること、またなかなか手に入らないことで、ボルドーで最も高価なワインの1つになっている。魅惑、魅力、そして純粋な飲む喜びという点において、ル・パンの右に出るものはいない。 現在、ティアンポン家の一員、ジャックが、このエキゾチックで完熟感のあるポムロールをつくっている。ガレージ・ワインの先駆けであり(ヴィユー・シャトー・セルタン、ル・クロワ・サン=ジョルジュ、ゴンボード・ギヨにはさまれた切手のように極小の畑から、500~600ケースが生産される)、ル・パンは若いうちは樽香も強く、過度の異国趣味があって、度を超えた感じがするが、熟成するにしたがって重みと豊かさが増してくる。 今までで最高のヴィンテージは(たくさんあるのだが)2000年、1998年、1990年、1989年、そして1982年である。1999年、1995年、1985年といったほかの年も、最高に近い。このごく小さな畑は、1979年にティアンポン家が手に入れたものだ。ジャック・ティアンポン自身の話では、偉大なまでの豊かさと荘厳さを備えたワインを目指しているという。 ル・パンは、マロラティック発酵をオークの新樽で行った、ボルドーで最初のシャトーの1つである。これは現在、隣のサン=テミリオンで広く採用されている方法だが、ル・パンの派手な個性はおそらく、ここからきているのだろう。これは労働力を要する方法なため、常にワインを「監視することが可能な、比較的生産量の限られたシャトーにしかできない。しかし、この技術があってこそ、ル・パンのスモーキーな、エキゾチックな香りの巨大なブーケが生まれるのである。また、どのような秘訣があるにしろ、ポムロール丘陵のこの立地にある鉄分豊富な砂利質の土壌が、微小な生産量のル・パンにカルト的人気をもたらすのに一役買っていることは確かである。 ル・パンはいまだに、セラーで長く寝かせた時の熟成がうまくいかないのではないかと批判されている。これは10年前にはごもっともな懸念だったかもしれないが、ル・パンの初期のヴィンテージ(最初のヴィンテージは1979年)で、現在おかしくなったワインはない。それどころか、ワインは瓶の中で安定し、重みを増す傾向にあるようだ。若いうちよりも、10~15年後のほうが、輪郭と豊かさを示すことすらある。つまり、ワインそのものよりも価格を評価しがちだった陰湿で幼稚な評論家たちは間違っていたということだ。約20年を経ている初期のヴィンテージは、とてつもなく持ちこたえている。私は、ル・パンは偉大なヴィンテージで25~30年以上は持つ力のあるワインだと思っている。 |