ドメーヌ・プリューレ・ロックは、アンリ・フレデリック・ロック氏が1988年に創立したドメーヌ。当初ヴォーヌ・ロマネに設立されましたが、1989年にニュイ・サン・ジョルジュの街中に醸造設備を備えたドメーヌを、プレモーに樽貯蔵庫を持ちました。ロック氏はドメーヌ・ルロワの2代目アンリ・ルロワ氏の孫にあたり、あのマダム・ルロワの甥っ子にあたります。1992年からドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)の共同経営者にもなっています。惜しまれながら2018年にこの世を去ったロック氏を引き継ぎ、2010年から共同経営者として働いていたヤニック・シャン氏がドメーヌを担っています。|
ロック氏はDRCの醸造責任者ベルナール・ノブレ氏のアドバイスを受け古文書を研究し、700年以上前にシトー派の修道士が行っていた有機栽培を復活させ、醸造法にも伝統的手法を採用。「この手法は微生物を活性化させることにより肥沃な土壌を維持し、宇宙の摂理と調和を目指した栽培方法だ」とロック氏は語っています。「ワインの品質の8割はブドウで決まる」という考えのもと、最高のブドウを作るべく、肥料にはわずかな量の有機肥料を使い、除草剤、化学肥料なども一切使用しないという有機無農薬栽培を実践。収穫は全て手摘みによって行われ、厳しい選果を経て醸造へと回されます。 醸造に関してもまさに自然で伝統的な手法で、収穫したブドウは選果した後、房をそのまま丸ごと発酵槽に入れ、木樽を使い全て自然酵母のみで発酵が行われます。また、醸しは今なお人の足でブドウを潰して行うという古くからのワイン造りにこだわり、澱引きせずノン・フィルターで瓶詰めをします。さらにこの間、酸化防止剤のSO2も一切添加しないという手法を厳格なまでに貫いています。熟成に使用する樽はトロンセ産で、DRCが50年以上前に現地買い付けし、20~30年長期乾燥させた樽材を共同使用しています。|
厳格なビオディナミで造られるそのワインは、まず注いですぐにはビオワイン特有の、少しくぐもった香りがあります。おそらく酵母に由来するもので、イーストやきのこのような素朴な雰囲気を持っています。しかし、グラスの中でほぐれていくと、バラやベリーなど、浮き立つような華やかなアロマが現れます。口に含んだ途端、飲み手を包み込むような柔らかな質感で、それでいて、じわじわと舌に染み込んでくる旨みは、果実そのもののパワーを感じます。 ビオディナミで造られるワインというと、独特の還元臭やボディの弱さが目立ち、身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、このプリューレ・ロックのワインは違います。純粋なピノ・ノワールが魅力を振りまき、思わず「大地に感謝したくなる」ような味わい。一般的なブルゴーニュワインに言われる「荘厳さ」や「繊細さ」といった、緊張感のある味わいとは少し違った、想像を超える純粋さを持つブルゴーニュワインを発見できるはずです。|